GUNSLINGER GIRL 作:相田裕 ---------------------------------------- ■第7話 Ice cream in the Spanish open speace ♂ジョゼ(ジョゼッフォ・クローチェ): ♂ヒルシャー(ヴィクトル・ヒルシャー): ♂エンツォ: ♂エンリコ: ♂フランコ: ♂トンマーゾ: ♂シモーネ: ♂軍警察: ♂テロリストA: ♂テロリストB: ♂テロリストC: ♀ヘンリエッタ: ♀フランカ: ♀リコ: ---------------------------------------- ***ローマのあるリストランテ。 ***ヘンリエッタ、ジョゼ、ローマ支局課員エンツォが活動家エンリコを監視している。 エンツォ「あの奥の席にいるのがエンリコ・ベルディーニ。      「五共和国派(パダーニャ)」の中でも元「赤い旅団」系の極左テロリストで……      昨年の共和国広場爆弾テロ他4件の実行犯だ。      どうだヘンリエッタ、何か喋ってるか?」 ***ヘンリエッタ、強化された聴力で聞き耳。 ヘンリエッタ「むずかしい政治のお話です……。        「イタリア開発公社(ズヴィルッポ・イタリア)」の南部開発事業について批判しています。        『これ以上南部に北部の血税が注がれることがあってはならない』        『今回の計画が成功すれば政府も考えを改めることだろう……』」 エンツォ「資金目当てに宗旨変えか…。      あいつは元々アナーキストだったはずだ。」 ヘンリエッタ「考えが変わったんですか?」 エンツォ「いいや、活動資金が出るならどの旗の下でもいいんだよ。      「五共和国派」の"パダーニャ平原独立運動"を支えるのは…。      欧州の右傾化と反グローバルの流れに乗った北部の資本家たちだ。      銀行強盗で資金調達していた「赤い旅団」とは大違いだからな。」 ヘンリエッタ「そうなんですか?ジョゼさん…。」 ***ヘンリエッタ、ジョゼの厳しい表情に驚く。 ヘンリエッタ「!…。」 ジョゼ「とにかく最低な連中さ。     思い切りこらしめてやりなさい。」 ---------------------------------------- ***撤収し、ローマの街道を歩く3人。 ジョゼ「エンツォ、僕らはエンリコから目を離して平気なのか?」 エンツォ「今はうちの局員を張りつかせてるから大丈夫さ。      捕らえるのは潜伏先をつきとめてからだ。      それまで支局で襲撃準備を整えてくれ。」 ジョゼ「ああ。」 エンツォ「ところでフラテッロ一組で対処できそうか?      エンリコだけは殺さず捕らえたいんだが。」 ***ヘンリエッタ、暗い顔になる。 ジョゼ「捕らえるとなると難しいな。     今夜までに本部から何組か呼んでみるよ。」 エンツォ「悪いなジョゼ。      今ローマ支局は別件で人手不足なんだ。      新事の得意な連中は皆、国立博物館行っちまってるんでな。」 ジョゼ「エンリコの「計画」というのは?」 エンツォ「もちろんどこかを爆破する気だろう。      手段が目的化したあぶない男だからな…」 ***エンツォ、うつむくヘンリエッタに気づき頭撫でる。 エンツォ「どうした嬢ちゃん。」 ヘンリエッタ「あ」 エンツォ「そうがっかりするな。      ジョゼは別にお前が頼りないなんて思ってるんじゃないぞ。      本部から応援を呼んでスマートに片付ければ、なにか褒美でもくれるさ。」 ジョゼ「(苦笑AD)。」 ***エンツォ、手についた香りに気づく。 エンツォ「ん?      なんだこりゃ…、香水か?」 ジョゼ「ああ。何でも買い与えすぎかな?     でも担当官に渡される経費はこの子の給料みたいなものだし…。」 エンツォ「まぁ子供ってのはこのくらいの時期が一番可愛いもんだからな…。      色々プレゼントしちまうのも分かるさ。      うちの娘なんかもう夜遊び覚える年頃で…。      ほとんど家に寄りつかないぜ。      (苦笑AD)。」 ***三人、公安部ローマ支局に到着。受付。 エンツォ「トンマーゾ、本部の応援を連れてきたぞ。」 トンマーゾ「ああ、連絡は受けてる。       さっさと連れてってくれ。」 ***ヘンリエッタに厳しい目を向ける受付課員。 ---------------------------------------- ***ローマ支局、宿泊室。 エンツォ「さっきは悪かったなあ…。      外から手を借りるとなるとどうしてもいい顔されないもんでな。」 ヘンリエッタ「いいんです。        どこに行っても同じですから。」 エンツォ「(嘆息AD)。      ま…、夕方までゆっくり休んでくれ。      なにか必要な装備はあるか?」 ジョゼ「ああ…、ヘンリエッタにFN Sb193弾を…。     あとファイブ・セブンを用意してくれ。」 エンツォ「分かった。      じゃあ、後でな。」 ***エンツォ、OUT。 ***ヘンリエッタ、不満顔。 ヘンリエッタ「応援はもう来てるんですね…。」 ジョゼ「ああ…。     リコとトリエラを呼んだよ。     エンリコを尾けて潜伏場所がわかったそうだ。     テーヴェレ川の中州にあるシンパの提供した隠れ家らしい。     襲撃までまだ3時間はある。     ご褒美を何にするか考えながら一眠りしなさい。」 ***ヘンリエッタ、笑顔。 ヘンリエッタ「はい。        でも、実はもう決めてるんです。」 ---------------------------------------- ---------------------------------------- ***フリーの爆弾テロリスト フランコ、フランカの潜伏場所。 ***フランカ、電話でエンリコと話す。 フランカ「エンリコ、どうして勝手にローマ入したの?      物はオスティアで引き渡す約束よ。」 エンリコ「悪いなフランカ。      先に現場の下見を済ませたかったんだ。」 フランカ「ローマは例の「公社」とやらのお膝元らしいじゃない。      むやみに滞在するのは危険だわ。」 エンリコ「昼間何者かに尾けられたがすぐ撒いてやったさ。      奴らは今頃は博物館の騒ぎで手一杯だろう。      とにかく明日中に実行したい…。      悪いが明日の朝イチで届けてくれ。」 ***電話切れる。 フランコ「………困った奴だな。」 フランカ「馬鹿につける薬はないわ。      上の指示だから手を貸してやったけど…。      ああいうのにはさっさと消えてもらいたいわね。」 フランコ「で、どこに仕掛けるって?」 フランカ「スペイン広場って言ってた。」 フランコ「………。      …いいのか?」 フランカ「もし本気だったら…。      偽物でもくれてやればいいわ。」 ---------------------------------------- ***電話を置いたエンリコSide。 エンリコ「爆弾の手配ができたぞ。」 テロリストA「あいつらの手を借りる必要があったのか?」 エンリコ「ああ。      フランコとフランカの作る爆弾は解体不可能という評判だからな。」 ***外を見ていたテロリストが異常を感じる。 テロリストB「エンリコさん、何か変です。       さっきから誰も橋を渡ってきません。」 エンリコ「ん。事故でもあったかな…?」 テロリストB「うーん、ここからじゃ分かりにくいですね。」 ***エンリコ、無線で見張りに連絡。 エンリコ「シモーネ。」 シモーネ「何ですか?」 エンリコ「対岸の様子がおかしい。      様子を見てきてくれ。」 シモーネ「了解。」 ***無線を切った瞬間、後ろからトリエラに首を締められシモーネ絶命。 シモーネ「(もがきAD)。      ………。」 ジョゼ「よし、僕たちも行こう。」 ヘンリエッタ「はい。」 ***トリエラ、ヘンリエッタ、突入。ガードを射殺。2階へ。 ***出てきたテロリスト。無線でエンリコに報告。 ***リコ、邸外からそれを狙撃。 テロリストC「エンリコ敵だ…!!(撃たれ死亡AD)。」 ***エンリコ、部屋で狙撃音を聞く。 エンリコ「部屋の明かりを消せ!      窓際に立つなよ!!      …まさか社会福祉公社か!?」 ***通信で連絡をとりあうフラテッロ達。 リコ「ジョゼさん。三階南東の角部屋で灯りが消えました。」 ジョゼ「エンリコはそこだな…、見えるか?」 リコ「ここからでは無理です。」 ジョゼ「ヒルシャー、そっちはどうだ?」 ヒルシャー「トリエラを西から登らせています。」 ジョゼ「よし、ヘンリエッタを突入させるから挟撃しよう。」 ---------------------------------------- ***エンリコの部屋の前にバリケードを作り、待ち構えるテロリスト。 ***ヘンリエッタ通路を歩く。エッタに気づき発砲。 ヘンリエッタ「きゃっ!!撃たないでください!!」 ***怯え、両手あげるヘンリエッタ。 ヘンリエッタ「た…助けて…。        下で鉄砲を持った怖い人がいて…それで…」 テロリストA「あの子供…どこから入り込んだんだ?」 テロリストB「丁度いい、人質にできます。」 テロリストA「そうだな。        …安心しろ!早くこっちに来い!」 ヘンリエッタ「………。」 テロリストA「さあおとなしく…」 ***ヘンリエッタ、体当たり。 ヘンリエッタ「(気合いAD)!」 ***一瞬で二人を射殺。そのまま部屋に突入。 エンリコ「くそっ…!!」 ***エンリコ、手榴弾で自爆を図る。 ***トリエラ、窓を割って入りショットガンを突きつける。 ***エンリコ、両手あげ投降。 エンリコ「ぐっ…!(歯噛みAD)。」 ---------------------------------------- ---------------------------------------- ***翌朝。ヘンリエッタ達が襲撃した建物の周辺に軍警察。 ***フランコとフランカ、近づき。 フランカ「お巡りさーん。」 軍警察「ん。」 フランカ「あの中州で何かあったの?」 軍警察「ああ、昨晩あっちで捕り物があってな。     今は立入禁止だ。」 フランカ「(嘆息AD)。      スペイン広場は命拾いしたってわけね…。」 ---------------------------------------- ***スペイン広場。ジョゼとヘンリエッタが並び歩く。 ジョゼ「(微笑AD)。     ご褒美がただのジェラートでいいのかい?     しかもこんな真冬に…。」 ヘンリエッタ「いいんです。        スペイン広場でジェラートというのに意味があるんです。」 ***ヘンリエッタ、フランカにぶつかる。 ヘンリエッタ「きゃっ!」 フランカ「!      あらあら大丈夫?」 ヘンリエッタ「あの…、ごめんなさい。」 フランカ「ジェラートが無事で良かったわね。      せっかくスペイン広場に来たんだものね。」 ***ヘンリエッタ、微笑む。 ヘンリエッタ「はいっ。」 ***フランコとフランカ、去るヘンリエッタを見ている。 フランコ「どうかしたのか?」 フランカ「あの子PUPAの香水(プロフェーモ)をつけてたわ。」 フランコ「………それで?」 フランカ「アマーティのヴァイオリン、正しい発音のイタリア語…。      きっとどこかいい所のお嬢様ね。      エンリコの馬鹿が捕まって本当に良かったわ…。      ああいう子こそ、私たち「五共和国派」の守るべきものだもの。」 La Fine.