原作
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原作:久住昌之 作画:谷口ジロー |
時間
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10分 |
総セリフ数
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33 |
LINK
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★キャラクター紹介へ |
001
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M
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納品のついでとはいえ、江ノ島なんて来るのは学生の時以来2度目だ。 何年ぶりだろう。 |
002
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M
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こんなだったかなぁ…全然覚えてない。 前に来た時は当時つきあっていた彼女と一緒だったな。 その頃俺はカメラに少し興味を持っていて、確か崖の見える場所で彼女のモノクロ写真を撮ったんだな。 |
003
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ゴロー
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懐かしいな。 長いコートを着てたからシーズン・オフだったと思う。 |
004
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M
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あれはいったいどこだったんだろう……。 だけどこの雰囲気、俺は嫌いじゃないな。 曲がりくねった細い坂道に、古い小さな店がこちゃこちゃと軒を並べているこの感じ…。 |
006
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M
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さてどこかでなんか食べよう。 さすがにシーズン前の平日は人出も少ない。 |
007
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ゴロー
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崖…。 あっ、ここだ。 |
008
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M
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俺はカメラの露出に夢中だったけど。 もしかしたらあの頃すでに彼女の心は、俺から離れつつあったのかもしれない。 |
009
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ゴロー
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あ…。 ということはこの先に饅頭屋があるはずだぞ。 |
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010
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ゴロー
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あった。 すみません。饅頭をバラで2個ください。 今食べていきます、ここで。 |
011
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ゴロー
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(饅頭食べる)はふ はふ はふ |
012
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M
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うん、うまい。 当時の味は全然覚えてないけど、とりあえず美味しいぞ。 軽くてあたたかい。 あぁ…なんだかいいなぁ。 |
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013
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ゴロー
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あれ。 |
014
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M
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ここだったかな、 あの時に入ったの…。 まあいい。とりあえず飯だ。 |
015
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ゴロー
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えーと、なににするかな。 |
016
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M
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海を一望できる窓際の席に通された。 |
017
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ゴロー
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この江ノ島丼の蟹の味噌汁付きをください。 あとさざえの壺焼き。 |
018
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M
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長続きしなかったな……今はナカムラのカミサンで二児の母か。 そういう運命なんだよな。 |
019
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ゴロー
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おっと…ネコ… |
020
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M
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窓のさんをネコが通り過ぎていった。 あいつも腹が減ったのかな。 そんなことを考えていると、俺の飯が来た。 |
021
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N
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【江ノ島丼セット】1300円 <一見親子丼風> 平たく薄い丼に盛られキザミノリが多め。ご飯は少なめ。 <蟹の味噌汁> 半身がガサッと入り、割と派手だが味薄い。 <おしんこ> 特筆すべきこともなき2種。 【さざえの壺焼き】850円 中身はすでに切ってある。薬味はなし。 |
022
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ゴロー
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(蟹の味噌汁をすする)ズズゥ |
023
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M
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ちょっと味が薄いな…… なんという種類の蟹だろう。 このへんで採れるのかな。 |
024
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ゴロー
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これが江ノ島丼…か。 (江ノ島丼食べ)もぐ もぐ |
025
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M
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うん…卵が結構甘い感じ。 これは……、何が入ってるんだ…? これはアワビか?卵の味付けが濃くてよくわからん。 |
026
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ゴロー
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(硬い食感にあたり)コリ ん?こりゃあ"さざえ"か。 |
027
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M
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しまった…そうか、じゃあ"さざえの壺焼き"でさざえがダブってしまった。 なんだ…。それなら焼きハマグリにすればよかったが。 しかしハマグリ3つで850円というのもなぁ。 |
028
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ゴロー
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(さざえの壺焼きを食べる)コリ コリ |
029
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M
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ちょっとしょっぱいかな…でも感じ感じ。 (海を見て)やっぱりこういうところで食う物に文句言っちゃいけないぜ。 |
030
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ゴロー
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(飛来したトンビに驚き)わっ! |
031
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M
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店員さんが慣れた手つきでトンビに魚をやっている。 トンビの方も勝手知ったるという感じで、上手いことキャッチするもんだな。 |
032
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ゴロー
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(感嘆して)ほ――っ |
033
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M
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季節はずれの海とトンビの群れ……か。 さえない思い出の脇役にピッタリかもしれん。 |