| 台本リスト | 第002話 アスターテ会戦

銀河英雄伝説 第001話 永遠の夜の中で
原作
田中芳樹
上演時間目安
25分
総セリフ数
189
LINK

※卿・・・読みは「けい」。爵位を保持する貴族への敬称。
※ファーレンハイト, アンネローゼ, オーベルシュタインはセリフなし


001

N

いつの世も戦争が続いている。
いつの世も戦争によって残されるのは、無人の荒れ野だけだ。
そして刻まれた傷は、時の流れとともに消えてゆく。
その傷を目撃し記憶しているのは、満天に輝く星の群れかもしれない。
その星すら、いつの日か流れ星のように消え去る運命にある。
これは、そんな星々の間でいつの日か語られたある人間たちの今はもう忘れかけている戦いの記録である。

その頃銀河という小さな島宇宙の中は、大きく二つに分かれて戦っていた。
銀河帝国と自由惑星同盟である。
さらに両者と交易する小都市国家フェザーン自治領があり、戦いに参加しようとせず、両方の戦いの成り行きを見守っていた。
戦争は、既に150年続いていた。

---

002

N

宇宙暦796年
帝国暦487年 初頭

帝国艦隊旗艦ブリュンヒルト。
その船用乗降口に揚陸艇が5隻泊まり、それぞれからウィルバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ大将をはじめとする帝国軍の提督たちが乗り込んできた。
同艦ブリッジではローエングラム・フォン・ラインハルト上級大将とその副官ジークフリード・キルヒアイス大佐が無限に広がる宇宙に目を向けていた。

003

キルヒアイス

星を見ておいでですか?

004

ラインハルト

星はいい。何事にも動じず、いつもじっと同じ場所で瞬き続け、私たちを見守ってくれる。

005

キルヒアイス

はい。あの星の群れに比べれば、我々の戦いは小さなものなのかもしれません。

006

ラインハルト

確かに・・・我々が見ようとしているものに比べれば、はるかに小さい戦いだ。

007

キルヒアイス

我が軍が対する敵は2倍のほぼ40,000艦。三方向から包囲せんとしています。
これにつき、5人の提督が閣下に緊急にお会いしたいと来られました。

008

ラインハルト

さぞや、我が軍の老いぼれどもは顔を青くして来ることだろう。

009

N

そこへ5人の提督が並び入り、ラインハルトに対して最敬礼をした。
最初に発言したのはその筆頭たるメルカッツ大将であった。

010

メルカッツ

司令官閣下。意見具申を許可していただきありがとうございました。

011

ラインハルト

卿らの言いたいことは分かっている。これが不利な状況にあると、卿らは言うのだな?

012

N

代わって口を開いたのはシュターデン少将。

013

シュターデン

とは申しておりません。ただ不利な態勢にあるのは事実です。
被害を最小にとどめるための手段が必要です。

014

ラインハルト

つまり撤退せよと言うのだろうがそうはいかん。
撤退など思いもよらんことだ。

015

シュターデン

なぜです!?理由を聞かせていただけますか。

016

ラインハルト

我々が敵より圧倒的に有利な態勢にあるからだ。

017

N

銀河帝国にも自由惑星同盟にも属さないフェザーン自治領。
その自治領府では領主であるアドリアン・ルビンスキーが戦場俯瞰図を眺めながらひとりごちていた。

018

ルビンスキー

数の勝負なら今回は同盟軍の勝ちか。
もっともどちらが勝とうと、この銀河を覆う戦雲は簡単には晴れぬ。我々フェザーン自治領は当分高みの見物だ。
帝国と同盟が戦いに疲労すればするほど、利益を得るのは我らフェザーンなのだからな。
フフフ・・・・・・

019

N

戻って、帝国艦隊旗艦ブリュンヒルトのブリッジ。

020

ラインハルト

今は前進あるのみ。これが私の考えた作戦だ。

021

シュターデン

机上の空論です!上手くいくはずがありませんぞ閣下。
このような・・・

022

ラインハルト

もういい。
卿らは私の指揮下にある。

023

提督たち

・・・・・・・・・。

024

ラインハルト

その指揮に従わぬならば、私は帝国の軍規に則り卿らの任を解き厳罰に処するだけのこと。

025

シュターデン

なっ!!

026

ラインハルト

もうよい退室せよ。
話は終わった。

027

N

司令官室を出た提督たちは、口々に非難の言を発した。

028

シュターデン

あの生意気な・・・金髪の小僧め!
姉に対するご寵愛で陛下のご威光を笠に着おって・・・!

029

メルカッツ

若さゆえだ、子供のような年の男に大人がそう熱くなることもなかろう。

030

ファーレンハイト

・・・・・・・・・。

031

N

提督らを送り出したラインハルトとキルヒアイス。

032

キルヒアイス

よろしいのですか?あそこまで言って。

033

ラインハルト

構わぬ。彼らの不満など戦いに勝てば消える。

034

キルヒアイス

・・・・・・。
今日は、姉君の誕生の日ですが。

035

ラインハルト

忘れるはずはない。
誕生日の贈り物は今日の戦いの勝利だ。

036

N

この度の会戦の報は皇帝の元にも届けられていた。
新無憂宮(ノイエ・サンスーシ)。
皇帝や貴族たちが多数住まう銀河帝国の本拠地といえる場所である。
国務尚書のクラウス・フォン・リヒテンラーデ公爵が、皇帝フリードリヒ4世に向けて、その書簡の旨を読み上げていた。

037

リヒテンラーデ

同盟を斉唱する叛徒共の兵力が、我が軍の2倍に達するとの知らせが参っております。

038

フリードリヒ4世

此度は・・・負けるか。

039

リヒテンラーデ

真に恐れ多い事ながら・・・。

040

フリードリヒ4世

そうか。討伐軍の指揮官はそちの弟であったな。

041

アンネローゼ

・・・・・・・・・。

042

N

フリードリヒ4世のそばに控えていたアンネローゼ・フォン・グリューネワルトは声をかけられるも、その顔を少し伏せるのみであった。

043

リヒテンラーデ

ローエングラム家の門地を継いで初の出征。
いささかめぐり合わせが悪うございましたか・・・。

044

フリードリヒ4世

あの者のことだ。無為に破れはすまい。

045

アンネローゼ

・・・・・・・・・。

046

N

アンネローゼの脳裏に10年ばかり前の記憶がよみがえる。
自らが帝室にあがることになった際、まだ幼かったジークフリード・キルヒアイスに弟ラインハルトの行く末を任せたことを・・・。

帝国艦隊 旗艦ブリュンヒルト 司令官室。

047

キルヒアイス

・・・。

048

ラインハルト

そう心配するな。我々は勝てる。
だが・・・

049

キルヒアイス

何かご懸念が?

050

ラインハルト

ひとつ問題があるとすれば・・・

051

キルヒアイス

はい。

052

ラインハルト

敵にあの男がいるかどうかだ。

053

キルヒアイス

かつて・・・"エルファシルの英雄"と呼ばれた男・・・

054

ラインハルト

・・・ん。

---

055

N

陣営は代わって、自由惑星同盟艦隊 第二艦隊 旗艦パトロクロス。
その作戦室で立案しているのは第二艦隊司令パエッタをはじめとする幕僚の面々である。
その長机の端には直立不動のヤン・ウェンリーの姿がある。

056

パエッタ

ヤン・ウェンリー准将、確かに作戦は読ませてもらった。
しかし、いささか慎重論過ぎる。
敵に比べ我がほうの艦数は倍だ。逃げ道を考えて戦っている状態ではない。
何故今更負けない算段をせねばならんのだ。

057

ヤン

しかし戦場では、何が起こるかわかりません。
油断は禁物でしょう。

058

パエッタ

・・・とにかく。全員の意見でこの作戦は却下する。

059

ヤン

・・・・・・・・・。

060

パエッタ

言っておくが、君に含むところがあるわけではないぞ。

061

ヤン

そのお言葉だけで十分です。
では!

062

N

私室に下がったヤン。そこでは、ヤンの後輩に当たるダスティ・アッテンボローがソファにもたれて待っていた。

063

アッテンボロー

またですか?

064

ヤン

はー。どうも教師運が悪いらしく、私の答案はいい点数が出ないね。

065

アッテンボロー

仕方ないですよ。あいつら年を取り頭が固くなってるんです。

066

ヤン

ホント年はとりたくないねぇ。

067

アッテンボロー

で。ご老体たちにお任せして・・・、今回は勝てるんでしょうね?

068

ヤン

数の上ではね、勝利は約束されたようなものだ。
だが・・・

069

アッテンボロー

だが?

070

ヤン

敵の司令官は奴さんだ。

071

アッテンボロー

ローエングラム伯ラインハルト・・・確か、上級大将。

072

ヤン

そう。白い船の司令官。
奴さんは何をやるかわからない。

073

アッテンボロー

やですよ、あの世に行くのは。

074

ヤン

ああ。だから目が離せない。私の作戦を却下した司令官でもね。
さ、ブリッジに行こうか。

075

アッテンボロー

その作戦立案書、読ませてもらいます。

076

ヤン

無駄だぞ。

---

077

帝国軍オペレーター

アスターテ会戦の敵軍数は我が軍の倍と発表されました。
帝国軍の勝利を遠い空より期待しましょう。

078

N

その頃の銀河帝国本国。
今回の作戦には参加しないオスカー・フォン・ロイエンタール中将とウォルフガング・ミッターマイヤー中将が卓を囲んでいた。
妥当人事なのか、人事部の略坊なのか・・・。この間までラインハルト麾下にあった二人は別の部署に移されていたのだ。

079

ロイエンタール

あの方から別れて4ヶ月か。

080

ミッターマイヤー

軍の人事には口を挟めないしな。
他の連中も、今はあの方のそばにいないそうだ。

081

ロイエンタール

ん。今ついているのは、赤毛の男だけだ。
あの方は、俺たち無しでいけるだろうか?

082

ミッターマイヤー

・・・と言って、ここから手伝いに飛んでいけるわけでもない。
大丈夫だよ。あの方はきっとやり抜くさ。

083

ロイエンタール

ああ。俺もそれは信じたい。

084

オーベルシュタイン

・・・・・・・・・。

085

帝国軍オペレーター

いよいよアスターテ会戦が開始されます。

086

N

帝国の、同盟の、フェザーンの。それぞれの思惑を孕んだ戦いの火蓋が切って落とされた。

---

087

ラインハルト

帝国軍全艦隊。正面の敵にむかえ。

088

N

ラインハルトの号令一下、帝国艦隊が大きな前進を始める。
それを受けた同盟軍旗艦では。

089

同盟軍オペレーター

帝国艦隊は予想の空域に止まらず、急進して第四艦隊と接触します。

090

パエッタ

なんだと!?そんな非常識な!
ありえぬ事だ!!

091

N

焦りを隠そうともしない司令パエッタ。が、その脇に控えるヤンとアッテンボローは冷静だった。

092

ヤン

私が奴さんなら同じ事を考えたはずだよ。

093

アッテンボロー

あー。困ったもんですよね。いつも先手を取るのはあの男だ。
(読みあげるように)"敵に積極的意思があれば、この状況を包囲される危機と考えず、分散した我が軍を各個撃破する好機と考えるだろう。"
やはり敵さんはそれを考えていたんだ。これに対する対策は・・・

094

ヤン

読んでも無駄だよ。もうその作戦を使う余地はない。
だがまだ別の手はあるが・・・、ただそうしなければ40,000隻の艦が20,000隻の艦に全滅させられ、敵に損害はほとんどないだろう。

095

N

まさに敵軍各個撃破のチャンスを得た帝国軍ラインハルト陣営。

096

帝国軍オペレーター

敵正面艦隊総数13,000。

097

ラインハルト

単なる数の計算だ。勝つのが当たり前ではない。

098

キルヒアイス

仰るとおりです。

099

N

同盟軍第二艦隊司令パエッタは対抗策を見出せずにいた。

100

パエッタ

40,000で敵を包囲するつもりが、各個に攻撃されれば各艦隊13,000。20,000対13,000。完璧に我がほうは負ける。

101

N

帝国軍の苛烈な攻撃にされされている第四艦隊。
その旗艦レオニダスのブリッジには迎撃指示を出す司令パストーレ中将の怒号がこだましている。
しかしオペレーターからの返答はむなしいものだった。

102

同盟軍オペレーター

敵戦闘艇急襲!発進間に合いません!!

103

N

第四艦隊の惨状は第二艦隊にも届いていた。

104

同盟軍オペレーター

第四艦隊、戦闘艇上昇部の武器に引火!発進不能!!
なお、敵妨害電波のためそれ以上の戦況は不明!!

105

パエッタ

なんてことだ!これでは腹に火薬を抱えて撃ってくださいと言わんばかりではないか!
第二艦隊、全戦闘艇発進準備!

106

同盟軍オペレーター

第二艦隊、戦闘艇発進準備完了。

107

パエッタ

よし。第二艦隊、第四艦隊救援に出撃。

108

ヤン

待ってください。

我々が到達した頃には戦闘は終わっています。
敵は戦場を離れ、第二第六艦隊よりも早くどちらかの艦隊の背後に回り攻撃をかけるでしょう。
我々は先手を取られ、しかも現在のところ取られっぱなしです。
これ以上敵の思惑に乗る必要はないと思われますが・・・

109

パエッタ

ではどうしろと言うのだ?

110

ヤン

第六艦隊とは戦場で合流せず、まず一刻も早く最短距離で別の場所で合流するのです。
第二第六の両艦隊をあわせれば26,000隻。20,000の敵と五分以上の勝負が出来るでしょう。

111

パエッタ

・・・。
すると君は、第四艦隊を見殺しにしろというのか?

112

ヤン

これから行っても間に合いません。
ここは広大な宇宙です。戦場まで何時間かかるとお思いですか?

113

パエッタ

しかし友軍の危機を放置してはおけん。

114

ヤン

では結局三艦隊いずれもが、敵の各個撃破戦法の餌食になってしまいます。

115

パエッタ

そうとは限らん!
第四艦隊とてむざむざ敗れはすまい。彼らが持ちこたえていてくれれば・・・・・・

116

ヤン

無理だと先刻も申し上げました。

117

パエッタ

第四艦隊を指揮するパストーレ中将は、私の友人であり百戦錬磨の猛将である。簡単に負けるわけはない!
もういい准将。我が軍は友軍を見捨てはしない。

118

ヤン

友人は大事でしょう。私にも第六艦隊に友人がいます。
みすみす今生きている第六艦隊を失いたくはありません。
そしてこの第二艦隊、たとえ第四艦隊を失うにしても・・・・・・

119

同盟軍オペレーター

第四艦隊の状況不明!

120

パエッタ

不明な以上望みはある。第二艦隊は第四艦隊を救援に向かう。
わかったな?

121

ヤン

そこまで仰るなら、私の出る幕ではありません。
では・・・

122

N

ブリッジからアッテンボローと共に待機室に下がったヤン。

123

ヤン

困ったことになったよ。
また一つ策を考えなければならない・・・せめて生き残る手をね。

124

アッテンボロー

これじゃ救助に行って、二重遭難する山登りみたいなものですからね。

125

ヤン

もうひとつの第六艦隊はどう出るかな?
あそこの作戦参謀は私の同期なんだ。優秀な奴だ。

126

アッテンボロー

ラップ先輩のことですね?

127

ヤン

ああ。上官さえ良ければ彼の意見は聞き入れられるはずなんだが。私なんかと違ってね・・・・・・

128

N

その頃第六艦隊に身を置くジェーン・ロベルト・ラップ少佐は司令のムーアと共に食事を取っていた。

129

ムーア

何?ラップ少佐。今なんと言った。

130

ラップ

はい。既に第四艦隊は敗北したと、小官は予測します。

131

ムーア

・・・第四艦隊を見捨てろと言うのか?

132

ラップ

それよりも無傷の第二艦隊と一刻も早く合流すべきかと。

133

ムーア

合流するとも。第四艦隊の戦っている戦場でな。

134

ラップ

それでは間に合いません。我々はみすみす敵の餌になってしまいます。

135

ムーア

敵の餌?敵を餌にするのは我々だ。
我々は第四艦隊を救援に向かうぞ。

136

ラップ

・・・は。もはや差し出がましいことは申し上げません。
ヤンの奴ならどうするか・・・・・・

137

N

帝国艦隊旗艦ブリュンヒルトの司令室ではメルカッツ提督からの戦勝報告がなされていた。

138

メルカッツ

抵抗は終わりました。完璧な勝利です。
以後掃討作戦に移ることになりますが。

139

ラインハルト

無用だ。

140

メルカッツ

は?

141

ラインハルト

戦闘不能な敵など相手にせずとも良い。
敵はまだ二つの艦隊が残っている。次の戦闘に備えて戦力を温存しておくことだ。

142

メルカッツ

わかりました。司令官閣下。

143

ラインハルト

彼らの態度も少しは変わるだろう。

144

キルヒアイス

変わらざるを得ないでしょう。提督たちの反感も。

145

ラインハルト

次に左右どちらの艦隊を攻撃すべきだと思う、キルヒアイス?

146

キルヒアイス

どちらに行くことも可能ですが、もうお考えは決まっておりましょう? 

147

ラインハルト

まあな。
そちらまでには何時間かかる?

148

キルヒアイス

四時間弱です。

149

ラインハルト

こいつ・・・。おまえも分かっていたのだな。
ではその旨を全艦隊に伝達しろ。時計方向に進路を変更しつつ進み、敵第六艦隊から攻撃する。

150

キルヒアイス

かしこまりました。
・・・・・・・・・。

151

ラインハルト

何か異議でもあるのか?

152

キルヒアイス

いえ、そうではありませんが。
この時間を利用して兵士たちに休息を取らせてはいかがかと思いますが。

153

ラインハルト

ああそうだな、気づかなかった。その時間は?

154

キルヒアイス

1時間半ずつ、二交代で。

155

ラインハルト

うむ。

---

156

帝国軍オペレーター

前方。敵軍第六艦隊発見。

157

ラインハルト

攻撃を開始せよ。

158

N

休息をとり鋭気を養った帝国軍は、万全の態勢で攻勢に出た。
その標的たる第六艦隊旗艦ペルガモンでは。

159

同盟軍オペレーター

4:30の方向に艦影。

160

ムーア

4:30だと!?

161

ラップ

敵です。迎撃の用意を。

162

ムーア

うろたえよって。敵は我々の行く手だ。そんな方向にいるはずがない!

163

ラップ

ですが閣下。敵はおそらく戦場を移動したのでしょう。

164

ムーア

第四艦隊との戦いを放置してか?

165

ラップ

申し上げましたでしょう。第四艦隊は、既に敗退したのです。

166

ムーア

不愉快なことを言うな!

167

ラップ

現実はもっと不愉快です!!

168

同盟軍オペレーター

敵襲です!!

169

ムーア

応戦だ!反転して応戦だ!!

170

ラップ

いけません!勝敗は目に見えています。今は少しでも犠牲を少なくすべきです!

171

ムーア

黙れ。俺は卑怯者にはなれん!

!?うわぁああああああああ!!!

172

N

その時、敵の砲の直撃がペルガモンのブリッジを襲った。
司令のムーアは蒸発。ラップも艦橋の折れたシャフトに半身を貫かれ、瀕死の状態となっていた。
わずかに残された体の自由をもって、ポケットから立体写真を取り出すラップ。

173

ラップ

ヤン・・・・・・お前は・・・こんな様になるなよ・・・・・・!
ジェシカ・・・・・・おまえとも会えなくなった・・・・・・。ここで消える俺を・・・許してくれ・・・・・・

174

N

第二艦隊旗艦ブリッジ。

175

同盟軍オペレーター

第六艦隊、全滅のもよう。

176

パエッタ

何!?

177

ヤン

ラップ少佐・・・!

178

アッテンボロー

無能な司令官の下ではどんな有能も役立たない。

179

同盟軍オペレーター

敵艦隊。我が第二艦隊に接近中!

180

パエッタ

第四艦隊、第六艦隊亡き今、数の上では圧倒的に不利だ。

181

ヤン

閣下、全艦攻撃準備を!

182

パエッタ

あっ・・・ああ・・・・・・そうだった!

183

ヤンM

ラップ・・・。私は簡単にはやられない。

184

N

残る敵を第二艦隊13,000のみとした帝国艦隊。旗艦ブリュンヒルト司令官室には再びメルカッツ提督が参上していた。

185

メルカッツ

最早、勝利は確実です。

186

ラインハルト

最後まで手綱を緩めるな。まだ何が起こるかわからない。
あの艦隊にあの男がいるとしたらな・・・。

187

キルヒアイス

ヤン・ウェンリー准将。

188

ラインハルト

ああ。そのとおりだ。

189

N

だがそう言いながらも、その後常勝の英雄と言われたラインハルトは、ほとんど勝利を確信していた。

Ende

| 台本リスト | 第002話 アスターテ会戦