第3話 東京都台東区浅草の豆かん
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孤独のグルメ
第4話 東京都北区赤羽の鰻丼

原作
原作:久住昌之
作画:谷口ジロー
時間
10分
総セリフ数
41
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※M・・・モノローグ、 N・・・ナレーション。すべてゴロー



001
M
久しぶりの朝6時起きだった。
赤羽に朝8時に納品とは雑貨の商人には少しキビシイ。海外買い付けに行く朝でもないのに。
しかも3階の店、エレベーターもなし、バイトもなし。
002
ゴロー
(伸びをする)うっ〜〜〜〜ん!
003
M
腰にきた・・・・・・というより、腹にきた。腹の中がキレイにすっからかんだ。
9時半か・・・・・・
よし!車はここに置いといて、駅前で何かサッサッとかき込んでいこう。
だけど・・・、こんなに朝早くからやってる店なんかあるのかな。
---
 
 
004
ゴロー
OK横丁・・・・・・
005
M
なんだかとぼけたネーミングの横丁だ。
これも赤羽カラーっていうのかな。
006
ゴロー
ん?なんだこの店は・・・・・・
007
M
飲み屋・・・・・・?バカな・・・・・・。今、朝の9時半だぞ。
008
ゴロー
あのぉ・・・・・・、食事できますか?
009
M
店の前にいた店員に聞いてみると、いけるらしい。しかもなんでも美味しいと太鼓判を押された。
食事のメニューは、カツ丼、いくら丼、すき焼き風肉豆腐ライス――――
010
ゴロー
すき焼き・・・・・・
011
M
うん!これだ。
012
M
店に入る。
早々に聞かれた飲み物―――酒をキャンセルし、早速注文する。
013
ゴロー
えーと、えーと、あの・・・・・・
表に会ったすき焼き風肉豆腐ライスってのを。
014
M
が、まだすき焼きは準備が出来ていないということでムリだといわれてしまった。
015
ゴロー
あ・・・そうですか。じゃ、ちょっと待って下さい。
016
M
まいったな・・・・・・。ピーンときたのになぁ。
所狭しと貼られているメニューに目を通す。
あとはうな重か・・・・・・。朝からうな重。それでもいいけどなぁ。
017
ゴロー
お・・・・・・
018
M
ごはんがあるのか。
うん!そうかそうか。それならば話が違う。
ここに並んだ大量のおつまみがすべておかずとして立ち上がってくる。
大判コロッケもいい。いくらどぶ漬けか。さんま焼きだっていいぞ。そこに生ゆば刺しなどつけるか。
朝からご馳走だ。岩のり250円も渋いな。
019
M
酒は飲めないけど、酒の肴はなんでも好きだ。
それにしてもなんだこの店は・・・・・・。みんなこんな朝っぱらから・・・・・・
青りんごサワー?鯉こく?
客によっては注文しなくても酒が出てきているぞ。・・・・・・常連?
020
M
今、ほんとうに9時半なのか?なんなんだこの雰囲気は。
俺は・・・・・・、夢でも見ているようだ・・・
周りからはひっきりなしに注文の声が上がっている。
021
ゴロー
あ・・・こっちもうな丼ください!
あ・・・・・・それといくらどぶ漬けと、生ゆばと、あと岩のりもつけて。
022
M
俺は周りの活気にあおられ、うな丼なんて頼んでしまった。
しかし、いったいみんな何の仕事をしているんだろう・・・・・・。
タクシーの運転手か警備員かな・・・・・・。いずれにしろ夜勤明けの人たちだろうな。
023
M
いやいや・・・・・・、みんなタクシーの運転手にも夜警にも見えない。
ハンチングに幅広の縦縞ジャケットの男。あの人なんていったい何をしている人なんだろう・・・想像もつかない。
朝の9時半の飲み屋。こんな世界があったとは・・・・・・
024
M
俺はちょっとくらっときた・・・・・・。時間がずれてしまったような錯覚におちいる。
025
ゴロー
あ、どうも。
026
M
飯がきた。
うーん・・・・・・、ちょっとカウンターが狭いなぁ。
しかし生ゆばとうな丼なんて、考えてみたらデタラメな組み合わせだったな。
027
N
<うな丼>
 750円。きも吸い、おしんこつき。
 身はやや小ぶり。つやよく、ふっくら。
 米が重たそう。
<きも吸い>
 きもが入っている。別売りだと250円。
<おしんこ>
 ベニショウガとカブ。別売りだと300円で内容も違う。
 ナス、キュウリ、ダイコンのぬか漬けがうまそう。
<生ゆば刺し 京都風>
 400円。
 中にあさつきが入って巻いてある。ポン酢で食べる。
<いくらどぶ漬け>
 600円。
 しょうゆに漬けてある。大つぶ。量もかなりある。
<岩のり>
 250円。
 要するにのりのつくだ煮。これもタップリ。
028
M
しかも岩のりが・・・多い・・・。どう使えばいいんだろうな、丼に対して。
ちょっと焦ったな・・・・・・。バランスがメチャクチャだ。
029
ゴロー
まぁいいか。まずは生ゆばからと。
(生ゆばを食べる)もぐ もぐ
うまい。京都を思い出すな。
この・・・うなぎも・・・・・・
(うなぎにかぶりつく)ハフ もぐ もぐ
うまいうまい。脂が乗ってる・・・、こりゃいいうなぎだ。
030
M
さて・・・、いくらのどぶ漬けはどう使うかな。
悩む俺の耳に店主の声が聞こえる。
昭和25年、オヤジさんの酒好きがこうじて朝から酒が飲める店を作りたいと思い、親戚中の反対を押し切って作ったのがこの店らしい。
031
ゴロー
フッ・・・。なるほどな。
032
M
うな丼とうな重じゃ、やっぱりうなぎ本体の大きさが違うのかご飯が余ってしまった。
よし・・・このいくらをのせていくら丼にしてみよう。
うん。そう考えれば、うなぎが小さい分タレも少なく、メシにもタレがしみてない部分が多いからちょうどいいぞ。
033
ゴロー
(いくら丼をほおばる)はむ
うん・・・こりゃあうまい。大正解だ!
034
M
ふと、後ろの席の男女が気になった。両方中年。
・・・・・・どういう関係の二人なんだろう・・・・・・
水商売って感じじゃないし・・・。こんなに朝早くから湯豆腐と酒なんて・・・・・・。
035
M
俺の生活とはまったく無縁とも思える世界が、こうしてここに展開されている。
この奇妙な空気の肌触りがなんとなく現実感を遠のかせている。
036
ゴロー
うう・・・。もう食えない。
037
M
岩のりは余分だったな・・・・・・。残すしかないか。
038
ゴロー
ごちそうさま。すいません、おいくらですか。
---
 
 
039
M
ああ・・・・・・腹がいっぱいだ。運転しながら眠くならなきゃいいが。
040
ゴロー
(タバコに火をつける)・・・ふう・・・・・・
041
M
帰ったらシャワーを浴びひと眠りだ。
・・・・・・しかし、目が醒めた時あの店の光景をほんとうに夢だったように思うかもしれない。

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