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浦沢直樹 |
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20分 |
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171 |
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キャラクター紹介へ |
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001 |
ヘッケル |
おい、ドクター!!ちょっと待てよ、ドクター!! 俺の話を聞けって!!よォ、ドクター!! |
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002 |
N |
ドイツ、フェルデンの路上で、黙って歩くテンマに、チンピラ風の小男オットー・ヘッケルが絡んでいる。 |
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003 |
ヘッケル |
このオットー・ヘッケル様がいい話、持ってきてやったんだぜ!ありがたく思えよ。 俺と組むって約束したろ?ちょいとやばい手術するだけで15,000マルクだぜ!15,000マルク! |
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004 |
テンマ |
誰がお前と組むと言った!? |
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005 |
N |
棘のある口調で言ったテンマは、馴れ馴れしく肩を組んできたヘッケルを振り払う。 |
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006 |
ヘッケル |
お・・・おい!ったく、しょうがねえなァ、あんただって警察から逃げまわるには金が必要だろ? |
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007 |
N |
その時である。縦じまのスーツを着た男が突然、テンマに密着してきた。 その男。周囲からは見えないように、銃口を突きつけている。 |
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008 |
セクレタリー |
車に乗れ! |
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009 |
テンマ |
・・・・・・・・・。 |
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010 |
ヘッケル |
ヘヘヘ。やり合おうたってムダだよ。肩組んだ時、あんたのふところから銃は抜き取ったからね! で、こちらがお客さんだ。あんたを患者のところまで連れて行く。 前金で、半額はいただいてある。あんたが無事患者を治したら、残りの金がいただけるというシステムだ・・・・・・。 ささっ、ごたごた言わずに乗った乗った。 ・・・この物騒なものと荷物は、俺が預かっとく。 返してほしかったら仕事して、金受け取って、グラシュテン通りのフランクの店に来な! |
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011 |
N |
テンマから盗った銃をチラつかせながら、ヘッケルは男の車にテンマを押し込んだ。 車は男の運転で、どこへともなく走り去っていった。 |
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012 |
ヘッケル |
じゃあな!しっかり稼いでらっしゃ――い!
・・・けけけっ、こりゃあやっぱりボロいビジネスだ。さあてと、前金受けとったことだし、奴が仕事してる間に・・・・・・・・・ 一杯やっか! |
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013 |
N |
半ば誘拐のように連れ去られたテンマは、緑豊かなフェルデン郊外の一軒家に来ていた。 |
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014 |
セクレタリー |
"法律家(ローヤー)"!もう大丈夫ですよ。医者連れてきました。 |
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015 |
N |
建物に入ると男が一人ソファーに横たわっていた。 創傷がどこかわからなくなるほど、出血がシャツ全体に広がっている。 ローヤーと呼ばれた男は、テンマらが到着したのに気づくと、少し顔だけを起こした。 |
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016 |
ローヤー |
ハァ ハァ ハァ・・・助かったよ、ドクター・・・・・・。早く・・・血を止めてくれ・・・・・・。 |
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017 |
テンマ |
腋窩(えきか)動脈が損傷しているな・・・腕がちぎれそうだ。散弾でやられたのか? |
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018 |
ローヤー |
ああ・・・・・・。とにかく血を止めてくれ・・・・・・・・・ ん?おい・・・、この先生手ブラじゃないか。"秘書(セクレタリー)、手術の道具は揃えたのか?" |
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019 |
テンマM |
(ローヤーは"法律家"、セクレタリーは"秘書"という意味だな。コードネームか?) |
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020 |
セクレタリー |
い・・・いや、街ん中ヤバくて・・・そこまでは・・・・・・ |
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021 |
テンマ |
・・・もし道具があっても、ここで手術なんかできないよ。 |
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022 |
ローヤー |
う・・・・・・? |
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023 |
テンマ |
早くちゃんとした医者に見せるんだな。 |
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024 |
セクレタリー |
それができたら、とっくにやってる!早く治せ!!この銃が見えねえのか!? |
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025 |
テンマ |
・・・・・・・・・。 どのくらい前に撃たれた? |
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026 |
セクレタリー |
よけいなことを聞くなと言ったはずだ!!早く治せ!! |
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027 |
N |
セクレタリーは、テンマ銃を突きつけ、半ば狂乱気味にまくし立ててくる。 動じないテンマの視界に、MP5K―――自動小銃が飛び込んできた。 テンマの頭に、ふと思い浮かぶものがあった。 |
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028 |
テンマM |
(コードネームで呼び合う二人、そしてこの自動小銃・・・・・・) |
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029 |
テンマ |
4時間前か・・・・・・? おまえ達、今朝のテロ事件の犯人か!! |
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030 |
ローヤー |
・・・・・・だったらどうなんだ? |
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031 |
セクレタリー |
そ・・・・・・そうだ!!だったらどうなんだ!! |
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032 |
テンマ |
断わる! |
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033 |
ローヤー |
な・・・・・・! |
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034 |
セクレタリー |
なんだとォ!! |
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035 |
テンマ |
無差別にテロをやるような人間を治す気はない!! |
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036 |
セクレタリー |
あ・・・・・・・・・!? ふ・・・ふざけるな!!自分が今、どういう状況にいるのかわかってるのか? 治せ!!治さなきゃ殺すぞ!! |
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037 |
テンマ |
・・・・・・・・・。 |
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038 |
ローヤー |
まあ、待て待て・・・・・・セクレタリー。 なあ、先生・・・、もうすぐ俺たちの仲間が助けにやってくる。 それまでに、血だけは止めてくれ。 |
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039 |
N |
ローヤーが譲歩した案を出す。しかしテンマは、何も答えずに近くにあったソファーのひとつに腰を掛けた。 |
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040 |
セクレタリー |
な、なんだ、その態度はァ!!死にたいのか―――!! |
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041 |
ローヤー |
待てと言ってるだろう・・・・・ |
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042 |
セクレタリー |
で・・・でも・・・ローヤー。 |
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043 |
ローヤー |
とりあえず今、この先生は俺の命をにぎってる・・・・・・ |
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044 |
テンマ |
・・・・・・・・・。 |
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045 |
ローヤー |
俺がもし死んだら、そのときは撃ち殺せ・・・。 |
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046 |
N |
ローヤーは、かすれた声で言った。 |
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047 |
N |
一方、臨時収入のあったヘッケルは、両脇に女性をはべらせて酒を飲んでいた。 |
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048 |
ヘッケル |
あっそう、今晩暇なのォ〜・・・。食事でもどう? |
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049 |
ギャル |
やだっ!なんかたくらんでる目ェしてる!! |
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050 |
ヘッケル |
たくらんでるよォ! 君らにどんなドレスが似合うかなァとか・・・・・・、そのドレス脱いだら、どんなかなァとか・・・・・・ |
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051 |
ギャル |
何、わけのわかんないこと言ってんのよォ!もう――!! |
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052 |
ヘッケル |
うっへっへっへっ、バーテンダー!とりあえずこの二人にもう一杯!! バーテンさんも飲んでくれ、俺のおごりだ!! |
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053 |
グロス |
よォ、ヘッケル!ずいぶんと景気がいいな。 |
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054 |
ヘッケル |
ああぁん、景気がいいも何も・・・・・・・・・・・・ああっ!! |
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055 |
N |
終始ニコニコしていたヘッケルの顔が、一瞬で真っ青になった。 声をかけてきたのは誰であろう、最も会いたくない相手、取立て屋のグロスだったのだ。 手下の大男も連れている。 無言でソロソロと離れていく女性二人に代わって、体格の良い男二人がヘッケルの両脇についた。 |
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056 |
ヘッケル |
ど・・・どうも、グロスさん・・・・・・あはははは・・・・・・ |
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057 |
グロス |
こんなとこで会えるとはなァ・・・・・・神様も、イキなはからいをしてくださるよ。 |
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058 |
ヘッケル |
え・・・ええ・・・、は・・・ははは・・・・・・。 |
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059 |
グロス |
じゃあ、返してもらおうか。 |
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060 |
ヘッケル |
へ? |
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061 |
グロス |
悪いなァ、こっちも慈善事業でやってるわけじゃないんでね。借金25万マルクと利子の5万マルク・・・、あわせて30万だ! |
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062 |
ヘッケル |
い・・・・・・いやァ、返したい気持ちはいっぱいなんスけどね・・・・・・ |
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063 |
グロス |
フフフ・・・うれしいねえ、その気持ちだけでもうれしいよ。 |
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064 |
ヘッケル |
へ、ヘヘヘ・・・・・・・・・ |
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065 |
グロス |
とりあえず、両腕へし折っとけ。 |
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066 |
ヘッケル |
あがが――――!! |
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067 |
N |
グロスの手下の大男が両手を後ろでねじりあげる。 |
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068 |
ヘッケル |
わ、わ、わ、わかった!!返す!!返します―――!! |
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069 |
グロス |
いい子だ、すごくいい子だ。 |
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070 |
ヘッケル |
だから・・・、あと一か月待って・・・・・・ |
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071 |
グロス |
両足も折っとけ! |
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072 |
ヘッケル |
あぎゃ―――!! |
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073 |
N |
ドタバタしている二人を尻目に、グロスはカウンターに腰掛けてテレビのニュースを眺めている。 |
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074 |
グロス |
ああ、このニュース。まったくひどいことしやがる。 |
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075 |
キャスター |
今朝、エルフルト駅構内で起きた自動小銃によるテロ事件は、死者12名、重傷者2名におよぶ大惨事となりました。 なお、テロの標的とされたGWE(ゲーヴェーエー)社のフリードリッヒ・ワンツ社長は、病院に運ばれる途中、死亡しました。 |
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076 |
ヘッケル |
あたたたたた!! |
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077 |
キャスター |
目撃者の証言から、この事件の容疑者は・・・・・・ |
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078 |
ヘッケル |
ちょっと待って・・・・・・いてててて!! ・・・・・・!? |
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079 |
キャスター |
画面に表示されています写真の、右マックス・シュタインドルフ、左カール・ブラントの二名とみられ、GWE(ゲーヴェーエー)社はこの両名に対する有力な情報には、30万マルクを支払うことを発表し・・・・・・ |
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080 |
ヘッケル |
ああ――!!こ・・・こいつらだったのか!! |
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081 |
グロス |
あん? |
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082 |
ヘッケル |
か・・・金、返せるよ!!俺、こいつらの居場所知ってるんだ!! |
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083 |
グロス |
なんだとォ? |
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084 |
ヘッケル |
居場所、教えてやるよ。それで借金はチャラだ!! |
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085 |
グロス |
本当だろうな、嘘だったら首の骨、へし折るぞ。 |
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086 |
ヘッケル |
本当本当!!絶対ホント!! |
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087 |
ヘッケルM |
(あ・・・・・・、でも今、あそこにはテンマが行ってるんだっけ・・・・・・? ま・・・・・・まァ、いいか・・・・・・) |
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088 |
N |
郊外一軒家に戻る。テンマはローヤーの治療を拒み続け、両者のにらみ合いが続いていた。 |
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089 |
ローヤー |
あんた・・・・・・ハァ・・・ハァ・・・さっき、俺のやったことを無差別テロとか言ったな・・・・・・ |
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090 |
テンマ |
・・・・・・・・・。 |
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091 |
ローヤー |
俺が・・・・・・無差別・・・・・・・・・?冗談じゃない! 俺がやったことには、ちゃんと意味があるんだ・・・・・・ |
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092 |
セクレイター |
ロ・・・ローヤー、あんまりしゃべらない方がいい。 は、早く治せよォ、このヤブ医者ァ!! |
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093 |
ローヤー |
いいんだセクレタリー。・・・ハァ・・・お・・・・・・俺は今、死んでもいい気分なんだ。 |
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094 |
セクレタリー |
ええ!? |
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095 |
ローヤー |
俺は・・・・・・あのGWE(ゲーヴェーエー)社のフリードリッヒ・ワンツ会長を殺すことができて・・・・・・ い・・・いつ死んでもいいくらい・・・すっきりしているんだ・・・・・・ |
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096 |
セクレタリー |
ロ、ローヤー・・・・・・ |
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097 |
ローヤー |
ドクター・・・俺は東側で弁護士をやってた。こいつは政治家の秘書だった・・・・・・。 壁が崩壊して、みんな職無しだ。俺達は真の愛国者だったのに。 先生、あんた、俺達の気持ちになって考えてみたことあるか・・・・・・?え?もぐりのお医者さんよ・・・・・・。 |
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098 |
テンマ |
・・・・・・・・・。 |
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099 |
ローヤー |
何が東西統一だ。何が資本主義だ!俺達の生活はどうなる。俺達はこの先、どうやって生きていけばいい!? あのGWE(ゲーヴェーエー)社は、壁が崩壊した直後、金にものを言わせて東にのりこんできた。 俺達の土地に・・・強引に工場を作った・・・いくつもいくつも・・・・・・俺達のプライドを踏みにじり・・・・・・ あそこは、俺達の国だ・・・・・・! 裏の世界で、コソコソともぐり医者をやっている人間に、四の五の言われるおぼえはない・・・・・・。俺は誇りを持って奴を撃った。 俺は・・・・・・誇りを・・・もって・・・・・・もって・・・・・・ |
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100 |
セクレタリー |
ロ・・・ローヤー・・・ |
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101 |
ローヤー |
・・・・・・寒い・・・・・・ |
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102 |
セクレタリー |
え? |
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103 |
ローヤー |
さむい・・・・・・ |
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104 |
セクレタリー |
が・・・・・・頑張れ!もうすぐ仲間が助けに来る!!頑張れよ、なっ!! |
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105 |
ローヤー |
来ないよ。 |
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106 |
セクレタリー |
え? |
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107 |
ローヤー |
仲間は来ない・・・・・・そんな気が・・・・・・する。 |
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108 |
テンマ |
・・・・・・・・・。 |
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109 |
セクレタリー |
あ・・・・・・・あ・・・・・・ 血ィ止めろ!!今止めろ!!でなけりゃ、撃ち殺す!! |
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110 |
N |
ローヤーのそばにいたセクレタリーが、再びテンマに拳銃を突きつけて怒鳴り散らす。 しかしテンマは相変わらず、要求に応じるどころか反応ひとつしない。 |
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111 |
セクメタリー |
早くしろォ!!こ・・・・・・殺す!! |
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112 |
ローヤー |
(小声で)死にたくない・・・・・・ |
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113 |
セクメタリー |
え・・・? |
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114 |
ローヤー |
死にたくない・・・・・・ 死にたく・・・・・・ない・・・・・・ |
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115 |
N |
一瞬ローヤーのほうを見たテンマが、突きつけられた銃を振り払って、突然立ち上がった。 下を向いたままで口を開く。 |
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116 |
テンマ |
怖いか・・・・・・ 死ぬのが怖いか!? |
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117 |
ローヤー |
ハァ ハァ・・・・・・ |
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118 |
N |
そして、ローヤーの隣まで近づくと、その目を真っ直ぐに見下ろしながら続ける。 |
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119 |
テンマ |
みんなそうやって死んでいった!!お前に殺された12人の人達は、みんなそうやって・・・・・・!! |
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120 |
ローヤー |
ハァ ハァ ハァ・・・・・・ |
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121 |
テンマ |
人を殺すのが、どんなにひどいことかわかったか!? |
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122 |
ローヤー |
ハァ・・・・・・・・・ハァ・・・・・・・・・は・・・うぅ・・・・・・・(気絶する) |
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123 |
テンマM |
(気を失ったか・・・・・・。) |
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124 |
テンマ |
消毒液とハサミ!! |
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125 |
セクレタリー |
へ?・・・・・・ |
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126 |
テンマ |
それぐらいあるだろう!! |
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127 |
セクレタリー |
あ・・・ああ、やっと治す気になったか。 そ・・・そりゃそうだ。ローヤーが死んだら、撃ち殺されるんだもんな!! |
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128 |
テンマ |
いいからさっさと用意しろ!! |
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129 |
セクレタリー |
あ・・・ああ。・・・・・・他には? |
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130 |
テンマ |
これは動脈性出血だ。低血圧性ショックを起こしている・・・・・・。損傷動脈を指で圧迫して止血する。 開放部の皮膚を縫合するのに針と糸・・・・・・いや、ホッチキスでもいい!! |
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131 |
セクレタリー |
ホ・・・ホッチキス!? |
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132 |
テンマ |
早く用意しろ!! |
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133 |
セクレタリー |
は・・・・・・はい!! |
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134 |
N |
止血と応急処置を終えたテンマは、ローヤーの創部皮膚を寄せてホッチキスで止めていく。 ローヤーは気絶しているため、ホッチキスのバチン、バチンという音だけがあたりに響いた。 |
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135 |
セクレタリー |
ひィ・・・・・・! |
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136 |
テンマ |
・・・ふう・・・。よし! |
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137 |
N |
包帯を巻き終えたテンマは、ローヤーを両肩に背負った。 |
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138 |
テンマ |
よいしょ! |
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139 |
セクレタリー |
え? ど・・・・・・どうするつもりだ。 |
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140 |
テンマ |
応急処置はした。病院へ運ぶ! |
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141 |
セクレタリー |
びょ・・・病院だとォ!!な・・・何考えてんだ。降ろさないと撃ちころ・・・!! |
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142 |
テンマ |
撃ちたければ撃て! だが、もし私を撃つなら、おまえがこの男を病院へ運べ! |
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143 |
N |
セクレタリーは何も言えず、家の裏手から山道へ入っていくテンマを、見送るしかなかった。 その時、パッと表の道路の景色が見えた。銀色の車体に緑のライン。ドイツのパトカーの色だ。サイレンは鳴らしていない。 |
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144 |
セクレタリー |
け・・・警察だ!! |
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145 |
N |
テンマは山道をしばらく行っていたが、そこでローヤーが意識を取り戻した。 |
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146 |
ローヤー |
ドクター・・・・・・ |
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147 |
テンマ |
!! |
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148 |
ローヤー |
ここで・・・・・・降ろせ・・・・・・。あんたは逃げろ。 さっき思い出したよ・・・・・・。あんた、どこかで見た顔だと思ったが・・・・・・連続殺人の容疑で手配されてる医者だろ・・・・・・。 |
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149 |
テンマ |
・・・・・・・・・。 |
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150 |
ローヤー |
早く・・・降ろせ・・・・・・。 |
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151 |
N |
テンマは、そばにあった木にローヤーを寄りかからせた。 |
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152 |
ローヤー |
いいか・・・・・・。俺がやったのは、無差別テロなんかじゃない・・・。 俺が殺したのは、GWE(ゲーヴェーエー)社の会長とその腰ギンチャクとボディーガード共だ。 |
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153 |
テンマ |
じゃあ、巻きぞえになった人間はいないというのか? |
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154 |
ローヤー |
!! あの・・・売店にいた子か・・・・・・ |
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155 |
テンマ |
やっぱり・・・知っていたんだな。あの子を撃ってしまったことを・・・・・・ |
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156 |
ローヤー |
・・・・・・・・・。・・・どうしてこんな男を助けた・・・・・・ 俺が死んだら、自分が撃ち殺されると恐れたからじゃないだろ? 治療を拒否した時のあんたの目は、殺されるのを恐れた目じゃなかった・・・・・・ |
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157 |
テンマ |
・・・・・・・・・。 |
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158 |
ローヤー |
なぜ・・・こんな・・・無差別テロの人殺しを助けた・・・・・・ゲホッ!ゲホッ! |
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159 |
テンマ |
・・・信じたからだ。お前は人間だって・・・・・・ |
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160 |
ローヤー |
・・・・・・ヘヘッ・・・。 早く行け!警察が来る! |
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161 |
テンマ |
生きるんだぞ・・・・・・ |
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162 |
N |
そう言い残すと、テンマは森の奥深くに消えていった。 |
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163 |
ローヤー |
あんた・・・・・・。あんた、名医だよ・・・・・・ |
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164 |
N |
しばらくして、ローヤーの元に警察がやってくることになる。 |
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165 |
N |
その夜――― テンマは、ヘッケルと決めていた集合場所に行っていた。 目標がテンマではなかったので、警察にしつこく追われることもなく森を抜け出ることができたのだ。 ヘッケルといえば、ローヤーらの居場所を密告したことで30万マルクを手にし、借金取りから開放されていた。 |
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166 |
ヘッケル |
それで、金はどうしたんだよォ!?まさか治すだけ治して、帰ってきたんじゃねえだろうな! |
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167 |
N |
二人がやり取りをしつつ街を歩いていると、ショウウィンドウからニュースが聞こえた。 |
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168 |
キャスター |
エルフルト駅構内で起きたテロ事件の犯人が逮捕されました。 犯人二人は、意外にも抵抗することなく、すみやかに投降した模様で、警察では・・・・・・ |
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169 |
テンマ |
ふう・・・・・・・・・。 |
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170 |
ヘッケル |
くっそ―――!!慈善事業やってんじゃねえんだぞ!コラ―――――!! |
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171 |
N |
ヘッケルのあてなき叫びは、フェルデンの街の灯りに吸い込まれていった。 |